text:sesuisho:n_sesuisho8-042
醒睡笑 巻8 頓作
42 京の立売へ悪党来たり・・・
校訂本文
京の立売(たちうり)へ悪党来たり。巻物どもを見、つひに、「しかるべきなし」と言へば、女房蔵へ行く間に、巻物一つ盗み挟箱(はさみばこ)に入れたり。さて、後に出でたるすき内を、銀一枚に乞ふ。「安し」とて売らず。
その間に女房、数へ見ればなし。隣家に言ひ合はせ、盗人一・二町帰りし時、人を走らかし、「今のをまけんに帰り給へ」と。すなはち帰る。銀を受け取り、「巻物はそれにある。につく1)」と、しきりに争ふ2) 挟箱を開けたれば、あり。巻物をも取り返し、銀をも戻したり。
事無為なる作意や3)。
翻刻
一 京のたちうりへ悪党来り巻物ともを見終 に可然なしといへは女房蔵へ行間にまき物 一つぬすみはさみ箱に入たりさて後に出たる/n8-18l
すき内を銀一枚に乞やすしとてうらすその間 に女房かぞへ見れはなし隣家にいひあはせ 盗人一二町帰りし時人をはしらかし今のを まけんに帰り給へとすなはち帰る銀をうけ とりまき物はそれにあるにつくと頻にありそふ はさみ箱をあけたれはありまき物をもとり 返し銀をも戻したり 事無為なる作意や/n8-19r
text/sesuisho/n_sesuisho8-042.txt · 最終更新: 2022/10/25 22:03 by Satoshi Nakagawa