text:sesuisho:n_sesuisho8-016
目次
醒睡笑 巻8 頓作
16 珍客は若衆なりし・・・
校訂本文
珍客は若衆なりし。座上に置き参らせて、相伴など歴々たる座敷なかばに、初心の座頭来たれる。末座の人、かれに問ふ、「そちは占方(うらかた)の上手と聞く。この座上に、いかなる人のおはすぞや」。「されば、児(ちご)か若衆なるべし」。「さても奇特を占うたるが、ちとは 目が見ゆるものかな」と、不審はれず。「何の調子をうかがひ言うたるぞ」。「されば、六曜の占のほかは存ぜぬなり。そのうちに、草中蛍(さうちうけい)が出でてあり。
知んぬ。蛍は尻に光あるあひだ、さて申したるなめり。
翻刻
一 珍客(ちんきやく)は若衆(わかしゆ)なりし座上にをき参らせて相伴(しやうはん)/n8-9r なと歴々(れきれき)たる座敷半に初心(しよしん)の座頭(さとう)来れる 末座の人かれにとふそちは占方(うらかた)の上手と聞此座 上に如何なる人のおはすそやされは児(ちこ)か若(わか)衆 なるへし扨も奇特をうらなふたるかちとは 目か見ゆる物かなと不審(しん)はれすなんの調子(てうし)を 伺ひいふたるそされは六曜の占の外は存せ ぬなり其内に草中蛍(さうちうけい)か出てありしんぬ 蛍は尻(しり)に光(ひかり)あるあひださて申たるなめり/n8-9l
text/sesuisho/n_sesuisho8-016.txt · 最終更新: 2022/10/02 22:51 by Satoshi Nakagawa