text:sesuisho:n_sesuisho7-024
醒睡笑 巻7 いひ損ひはなほらぬ
5 祈祷連歌の席にて宗匠たる人末座の者に向かひ・・・
校訂本文
祈祷連歌の席にて、宗匠たる人、末座(ばつざ)の者に向かひ、「思ひ寄りたることあらば、うかがはれ候へ。庭の木草(きくさ)、空行く雲、目前の境界(きやうがい)、いづれか言の葉に漏る類(たぐひ)あらんや」と勧めらるるを種(たね)とし、かかりたる天神の装束をながめゐたりしが、「さらば申してみむや。
紫色の自在天神」
と出だしたるを、執筆(しゆひつ)、「神祇近し1)」とて、追ひ返す。
また、「直し申さん。
紫色の自在宝殿」
と。
せめて始めの句ばかりならば、おだめしかるべからん2)。
翻刻
一 祈祷連歌(きたうれんか)の席にて宗匠(そうしやう)たる人末座(はつざ) の者にむかひおもひよりたる事あらはうかが はれ候へ庭の木草(きくさ)空行雲(そらゆくくも)目前(もくせん)の境界(きやうかい) いつれかことの葉にもる類あらんやとすすめ らるるをたねとしかかりたる天神の装束(しやうそく) をなかめゐたりしがさらば申てみむや 紫色(むらさきいろ)の自在天神(じざいてんじん) と出したるを執筆神祇ちかしとて 追返す又なをし申さん/n7-15l
むらさき色の自在宝殿と せめて始の句斗ならはおためしかるべからん/n7-16r
text/sesuisho/n_sesuisho7-024.txt · 最終更新: 2022/06/23 17:59 by Satoshi Nakagawa