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text:sesuisho:n_sesuisho6-134

醒睡笑 巻6 うそつき

14 山林に猿ども戯れゐたり・・・

校訂本文

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山林に猿どもたはぶれゐたり。十月末つかたにやありけん、柿の熟したる四つ五つ残り あるを、われ食はん、誰(たれ)食はんと、食らひ手は多し、柿は少なし、「所詮、年老い次第に食らはん」と言ふ。老猿出でて、「われは過去、迦葉仏(かせふぶつ)の時より、この山に住む」と。また一つが出でて言ふ、「それは一向近いことや。そのころわれは孫に離れ、歎きに沈みてありつるは」とある。

教月坊に向かひ、「そなたは奇妙なる作者なれども、あまり狂言にて証歌の名誉なし。いかが」といふ言下に、

  教月に毛がむくむくとはへよかしさる歌詠み1)と人にいはれん

  言はざると見ざる聞かざる世にありて思はざるをばいまだ見ぬかな

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一 山林に猿ともたはふれゐたり十月末つかたに
  やありけん柿のしゆくしたる四つ五つ残り
  あるをわれくはんたれくはんとくらひてはおほし/n6-66r
  柿はすくなし所詮年老次第にくらはんと
  いふ老猿出てわれは過去迦葉仏の時より
  この山にすむと又一つが出ていふそれは一
  かうちかい事やそのころわれは孫にはなれ歎
  にしつみてありつるはとある教仏坊にむか
  ひそなたは奇妙なる作者なれともあまり狂言
  にて証哥の名誉なしいかかといふ言下に
   教月に毛かむくむくとはへよかし
   さる哥よみと人にいはれん/n6-66l
   いはさると見さるきかさる世にありて
   おもはさるをはいまたみぬかな/n6-67r
1)
さる歌詠み・猿歌詠み
text/sesuisho/n_sesuisho6-134.txt · 最終更新: 2022/06/11 11:50 by Satoshi Nakagawa