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醒睡笑 巻6 児の噂
49 まことわびしき親を持ちたる児のありつるを小師の坊あはれみて・・・
校訂本文
まことわびしき親を持ちたる児(ちご)のありつるを、小師(こじ)の坊あはれみて、「これのお児はおいとしやな。里が無力(ぶりよく)なれば、ちともはれかましきことといふには、何かおり召されぬ物はない。おぬしの物とては、ただ一いろある、指似(しじ)ばかりぢやの」と言ひける時、「いや、それも人の見ては、『お児の指似にはころ過ぎた。そなたのではあるまい』と言ふほどに、あこが物と思はぬ」と。
翻刻
一 まことわひしき親をもちたる児のありつるを 小師の坊あはれみて是のお児はおいとしやな 里か無力なれはちともはれかましき事といふ にはなにかおりめされぬ物はないおぬしの物と ては唯一いろあるしじ斗しやのといひける/n6-23l
時いやそれも人の見てはお児のしじにはころ 過たそなたのではあるまいといふほとにあこ か物とおもはぬと/n6-24r
text/sesuisho/n_sesuisho6-049.txt · 最終更新: 2022/04/30 22:02 by Satoshi Nakagawa