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とろろ汁の出でたるを、座敷に古人ありて、「今日のことづて汁は、いつにまさり一しほ出来たる」など言ひ讃むる。「これは珍しき言葉や」と、その子細を問ふ。「さればよ、この汁にては、いかほども飯がすすむゆゑ、いひやる¹⁾との縁に、『ことづて汁』と言ふならん。「聞こえたる作意や」と感じ、やがてとろろをととのへ、客を呼ぶに、ことづてを問はれ、「おだいやる」とぞ申しける。

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一　とろろ汁の出たるを座敷に古人ありてけふの
　　ことづて汁はいつにまさり一しほ出来たるな
　　どいひほむるこれはめつらしき言葉やと／n5-55r

　　其子細をとふさればよ此汁にてはいかほとも
　　飯がすすむゆへいひやるとのゑんにことづて
　　汁といふならん聞えたる作意(さくい)やと感じ
　　やがてとろろをととのへ客をよぶにことづて
　　をとはれおだいやるとぞ申ける／n5-55l