ユーザ用ツール

サイト用ツール


text:sesuisho:n_sesuisho5-044

醒睡笑 巻5 上戸

2 尊氏将軍五世の孫義政公の御時洛中洛外酒を禁じ給ふことあり・・・

校訂本文

<<PREV 『醒睡笑』TOP NEXT>>

尊氏将軍1)五世の孫義政公2)の御時、洛中洛外酒を禁じ給ふことあり。万阿弥とて、同朋(どうぼう)のさぶらひしが、いかがして呑みたるやらん、面(つら)もどこも赤漆(あかうるし)にて塗りたる風情なるが、御前にひざまつきたり。

大樹、御覧じつけられ、「おのれは酒をくらうた面ぞや」と仰せあれば、「いや、あまり寒きまままかり出でざまに、焚き火にあたりてござる」と。「さあらば、ここへうせよ。かいでみん」とあり。是非なうて参りたれば、「隠れがない、熟柿(じゆくし)臭いは」と御諚(ごぢやう)の時、万阿弥、「さやうなる義もござ候ふべし。柿の木を焚き火にあたり参らせたほどに」と。

<<PREV 『醒睡笑』TOP NEXT>>

翻刻

一 尊氏将軍五世の孫義政公の御時洛中洛外
  酒を禁し給ふ事あり万阿弥とて同朋(どうほう)の
  さふらひしがいかがして呑たるやらんつらも
  どこも赤漆にてぬりたる風情なるが御前に
  跪(ひさまつき)たり大樹御覧しつけられをのれは酒
  をくらふたつらぞやと仰あれはいやあまりさ
  むきまま罷出さまにたき火にあたりて御座
  るとさあらばここへうせよかいてみんとあり
  是非なふて参りたれはかくれかない熟(じゆく)し/n5-39l
  くさいはと御諚の時万阿弥さやうなる義も
  御座候べし柿の木をたき火にあたり参ら
  せたほどにと/n5-40r
1)
足利尊氏
2)
足利義政
text/sesuisho/n_sesuisho5-044.txt · 最終更新: 2023/08/16 17:00 by Satoshi Nakagawa