text:sesuisho:n_sesuisho5-043r
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醒睡笑 巻5 上戸
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校訂本文
俗云はく、「僧の指南に順せば、酒を飲むべきを打翻し、烏有先生が境界に送らんかや。七宝山に登り、手を1)空(むなしく)して益無し。栴檀の林に入りて其の葉を採て何にや。佳酒を斟み数盃を飲まんには、如渡得船(によととくせん)なり。清樽無きに及んでは、其の糟を餔(くら)ひ其の醨(しる)を歠(すす)りても、余の甘美には勝りなん。東坡2)も、『山城薄酒不堪飽。勧君且吸杯中月。(山城の薄酒は飽くに堪へず。君を勧めて且つ杯中の月を吸ふ。)』と。天地の中間に人有り。酒を愛せざる者無し。『天若不愛酒、酒星不在天。地若不愛酒、地応無酒泉。天地既愛酒、愛酒不恥天。(天若し酒を愛せずんば、酒星天に在らず。地若し酒を愛せずんば、地には応に酒泉無かるべし。天地既に酒を愛す。酒を愛するは天に恥ぢず。)』と李太白3)は言はざるや。晋の劉伯倫4)は酒徳の頌を作る。其の辞に云はく、『枕麹籍糟無思無慮其楽陶々。(麹を枕とし糟を籍(し)く、思ひても無く慮も無し。其の楽陶々たり。)』。唐の白楽天5)、酒功讃を作る酒徳の頌、次之略に云はく、『吾嘗終日不食、終夜不寝、以思、無益。不如旦飲。(吾嘗て終日食はず、終夜寝ず。思へらく、益無し。且(ただ)飲まんにはしかず。)』と。
翻刻
若不誡飲酒永断智恵の種の俗云順せは僧の指南に可飲 酒打翻し烏有先生か境界に送んかや登り七宝山に空して乎無益/n5-38r
入栴檀の林に採て其葉を何にも斟佳酒を飲には数盃を如渡得船及 無清樽者餔其糟而歠ても其醨勝なん餘の甘美には東坡も山城の 薄酒は不堪飽に勧て君を且つ吸ふ杯中の月を天地の中間に有人 無不愛酒者天若不愛酒々星不在天地若不愛 酒地応無酒泉天地既に愛酒愛酒不恥天李太白は不言 乎晋の列伯倫は作酒徳の頌を其辞云枕し麹を籍(しく)を糟を 無く思ても無し慮も其楽陶々たり唐の白楽天作酒功讃を酒徳の頌 次の略云吾嘗て終日に不食終夜不寝以思とも無益不 如旦(たた)飲んにはと云も果ぬに十徳衣(きたる)禅門踈忽に罷出拙者は観/n5-38l
text/sesuisho/n_sesuisho5-043r.1692164527.txt.gz · 最終更新: by Satoshi Nakagawa
