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text:sesuisho:n_sesuisho5-031

醒睡笑 巻5 婲心

31 越前守の〓に高忠といひける侍の夜昼まめなるが・・・

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越前守の〓1)に、高忠2)といひける侍の、夜昼まめなるが、冬なれど帷(かたびら)をなん着たりける。雪の降る日、「歌を詠め」とありければ、この侍、「何を題にてつかまつるべきぞ」と申せば、「裸(はだか)なるよしを詠め」と言ふに、

  裸なるわが身にかかる白雪はうちふるへども消えせざりけり

と詠みければ、感じ給ひて、着たる衣を脱ぎて取らす。北の方もあはれがり、薄色の衣のかうばしきを取らせけり。

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一 越前守の〓に高忠(たかたた)といひける侍の夜昼(よるひる)
  まめなるか冬なれと帷(かたひら)をなんきたりける
  雪のふる日哥をよめとありけれは此侍何
  を題にて仕(つかまつる)へきぞと申せははだかなるよしを
  よめといふに/n5-17r
   はたかなる我身にかかる白雪は
    うちふるへともきえせさりけり
  とよみけれは感じ給ひてきたる衣をぬ
  きてとらす北の方もあはれかりうす色の
  衣のかうばしきをとらせけり/n5-17l
1)
底本、判読不可。岩波文庫は「時」。
2)
『今昔物語集』19-13では「藤原孝忠」。ただし、歌を詠むのは孝忠の侍。
text/sesuisho/n_sesuisho5-031.txt · 最終更新: 2022/02/27 13:00 by Satoshi Nakagawa