text:sesuisho:n_sesuisho5-020
醒睡笑 巻5 婲心
20 丹後の国に鉈の庄とてありかしこの百姓同じ百姓に米を貸しぬ・・・
校訂本文
丹後の国に鉈(なた)の庄とてあり。かしこの百姓、同じ百姓に米を貸しぬ。乞へどもつひになさず。
狂歌を詠む
借銭(しやくせん)を乞へどもくれぬ気の毒や生木に鉈の庄のものかな
幽斎公1)、御聞きあり。「その風情なる土民の上には、何として言ひけるぞ。やさしや」と感じ給ひ、米を三石つかはされし。
「かたじけなし」とて御礼に参り、「その座にて何とぞ申せ」とあれば、
日本さえ及びなき身に三ごくをままにせよとの御意ぞめでたき
翻刻
一 丹後の国に鉈(なた)の庄(しやう)とてありかしこの百姓同 百姓に米をかしぬこへどもつゐになさず 狂哥をよむ しやくせんを乞へともくれぬ気のどくや なま木に鉈の庄のものかな 幽斎公御聞あり其風情(ぜい)なる土民の上には何 としていひけるそやさしやと感し給ひ米/n5-12l
を三石つかはされし忝とて御礼に参り 其座にてなにとぞ申せとあれば 日本さえをよひなき身に三ごくを ままにせよとの御意そめでたき/n5-13r
1)
細川幽斎
text/sesuisho/n_sesuisho5-020.txt · 最終更新: 2022/02/23 18:53 by Satoshi Nakagawa