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text:sesuisho:n_sesuisho4-117

醒睡笑 巻4 唯あり

28 京の町を大根売りの大こかう大こかうと言うて通りける朝・・・

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京の町を大根売りの、「大こかう、大こかう」と言うて通りける朝、書を学ぶ僧の『三重韻』を見てゐたるが、かの大根売りを呼び入れたる。

「大根を召すか」と問ふに、「いな、そちが売る物を、『大こ』と言ふ、大きなる片言(かたこと)なり。元(げん)・魂(こん)・痕(こん)の韻に入つて、根(こん)にすうだ。あひかまへて、この後(のち)は『大こ』と言ふべからず」と教ゆる。商人(あきうど)、「ここな坊主は、なりふりも人がましきまま、大こを五十本も二十本も買はるるかと思うたれば、一向(いつかう)銭も持たれぬげで、つきもないことを言はるる」と、さんざん悪口して出でけり。

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一 京の町を大根売の大こかう大こかうといふてと
  をりける朝書をまなふ僧の三重韻を
  見て居たるか彼大根うりをよひ入たる大根
  をめすかととふにいなそちがうる物を大こと
  いふ大なるかたことなり元(げん)魂(こん)痕(こん)の韻(ゐん)に
  いつて根(こん)にすふた相構(あいかまへて)此後(のち)は大こといふ
  へからすとをしゆる商(あき)人ここな坊主はなり
  ふりも人かましきまま大こを五十本も廿/n4-67r
  本もかはるるかとおもふたれは一向銭ももた
  れぬけてつきもない事を云はるると散々(さんさん)
  悪口(あつこう)して出けり/n4-67l
text/sesuisho/n_sesuisho4-117.txt · 最終更新: 2022/02/08 01:54 by Satoshi Nakagawa