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醒睡笑 巻3 不文字
40 古田織部の数寄に出ださるるほどの物をば・・・
校訂本文
古田織部の数寄に出ださるるほどの物をば、その道を学ぶも学ばぬも、天然(てんねん)と賞翫(しやうくわん)し、もてあつかひしゆゑ、中酒(ちうしゆ)に座敷へ用ゐられつる盃(さかつき)までも、なべて人、織部盃(おりべさかづき)といひふるる。
さるまま、京に三八といふ者あり。「さては盃をば、いづれも織部といふものぞ」と合点しゐたり。ある時、三八が顔赤く、機嫌よさうなるを、人見付けて、「そちはあらけなく酔(ゑ)ひたる体(てい)ぞ」と言へば、「道理かな。今朝の振舞に、汁の椀の織部で、つづけざま三盃飲みたるもの」。
翻刻
一 古田織部の数寄に出さるるほとの物をば 其の道をまなぶもまなばぬも天然(てんねん)と賞 翫しもてあつかひしゆへ中酒に座敷へ 用られつる盃(さかつき)まてもなべて人織部盃といひ/n3-26r
ふるるさるまま京に三八といふ者あり扨は盃 をはいつれもおりへといふ物そと合点しゐ たりあるとき三八か顔あかく機嫌(きけん)よさう なるを人見つけてそちはあらけなくゑひ たる体(てい)ぞといへは道理かな今朝の振舞に 汁の椀のおりべてつつけさま三盃のみ たるもの/n3-26l
text/sesuisho/n_sesuisho3-059.txt · 最終更新: 2021/10/10 12:00 by Satoshi Nakagawa