text:sesuisho:n_sesuisho3-020
醒睡笑 巻3 不文字
1 朝倉の山椒を一袋持たせ侍のもとへ音信につかはしけり・・・
校訂本文
朝倉の山椒(さんせう)を一袋持たせ、侍のもとへ音信(いんしん)につかはしけり。折節かの侍、途中にて行き合ひ、文(ふみ)添へて上げければ、「そちの見るごとくなるまま、返事に及ばず。また一袋の御重宝(ごちようほう)悦び入り候ふ」よし、使、聞きとどけ、道の二・三町も行きしが、「よくよく思へば、今の言葉が済まぬ。今一度ことはらん」と、息をつきかね走り戻りぬ。馬をとどめ問はせけるに、「今の一袋は御重宝では御座ない。朝倉と申す山椒にて候ふ」と。
これなん不思議の御重宝1)。
翻刻
不文字 一 朝倉の山椒(さんせう)を一袋もたせ侍のもとへ音信(いんしん)に遣(つかは) しけり折ふし彼侍途中(とちう)にて行あひ文そ へて上けれはそちの見ることくなるまま返事 にをよはす又一袋の御重宝(てうほう)悦入候よし使 聞ととけ道の二三町も行しかよくよく おもへは今のことはがすまぬ今一度ことはらん と息(いき)をつきかねはしりもとりぬ馬をとどめ とはせけるに今の一袋は御重宝では御座ない/n3-11l
朝倉と申山椒にて候と これなんふし義の御重宝/n3-12r
1)
底本、この文小書き。
text/sesuisho/n_sesuisho3-020.txt · 最終更新: 2021/10/18 12:08 by Satoshi Nakagawa