text:sesuisho:n_sesuisho3-014
醒睡笑 巻3 文字知り顔
14 武士たる人の殿殿と言ふが殿の字の声はでんと教ゆる・・・
校訂本文
武士たる人の、「殿(との)殿(との)と言ふが、殿の字の声(こゑ)は『でん』」と教ゆる。また、「月といふ字の声はぐわち」と教ゆる。
この二字を習ひ得て、「いかさま晴れがましきところにて言ひ出ださん」とたくまれけるが、あるとき、館(やかた)に座敷能の始まりしを、物見のため人多く集りゐけり。そのみぎり、かの武士、威儀(いぎ)を気高くかいつくろひ、「殿原(でんばら)よ、殿原よ、それにゐる者どもを、みな縁(ゑん)から下へ月(ぐわち)とかせよ」。
せんないたしなみさうな1)。
翻刻
一 武士たる人の殿とのといふか殿(との)の字の声(こゑ)はでん とおしゆる又月といふ字の声はくわぢとおし ゆる此二字をならひえていかさまはれかましき 処にていひ出さんとたくまれけるが有時屋形 に座敷能のはじまりしを物見のため人お ほくあつまりゐけり其砌(みぎり)彼武士威儀(いき)を/n3-9r
けたかくかいつくろひ殿原よ殿原よそれにゐる者 ともをみなゑんから下へ月(ぐわち)とかせよ せんないたしなみさうな/n3-9l
1)
底本、この文数字下げで小書き。
text/sesuisho/n_sesuisho3-014.txt · 最終更新: 2021/09/18 17:49 by Satoshi Nakagawa