text:sesuisho:n_sesuisho2-073
醒睡笑 巻2 吝太郎(しはたらう)
3 すぐれてしはき者のたまたま得たる客あり・・・
校訂本文
すぐれてしはき者の、たまたま得たる客あり。「何をがなと思ひても、在郷(ざいがう)の風情なれば、心ばかりや」などと言ふところへ、「豆腐は、豆腐は」と売りに来たれり。亭主、「豆腐を買はん。さりながら小豆の豆腐か」。「いや、いつもの大豆ので候ふ」と。「それならば買ふまい。珍しうあるまいほどに」と。
亭主の口上、作意あるやうにて、とかく汚なし。「人性欲平、嗜欲害之。(人の性平らかならんと欲すれば、嗜欲これを害す。)」と『淮南子1)』にも書きたり。
また蜷川新右衛門親当(ちかまさ)2)が歌に、
紫の色よりもこき世中のよくには恥をかきつばたかな
翻刻
一 すくれてしはき者のたまたま得たる客あり 何をかなとおもひても在郷の風情なれは心 斗やなとといふ処へ豆腐は豆腐はとうりに 来れり亭主たうふをかはんさりなから小豆 のたうふかいやいつもの大豆のて候とそれ ならはかふまいめつらしふあるまいほとにと/n2-39r
亭主の口上作意あるやうにてとかくきたなし 人性欲平嗜欲害之と淮南子にも書 たり又蜷川新右衛門親当か哥に 紫の色よりもこき世中の よくには恥をかきつはたかな/n2-39l
text/sesuisho/n_sesuisho2-073.txt · 最終更新: 2021/08/18 12:49 by Satoshi Nakagawa