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text:sesuisho:n_sesuisho2-021

醒睡笑 巻2 貴人の行跡

1 信長公に対し公方御謀反の時節・・・

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信長公1)に対し、公方2)御謀反の時節、御出馬ありて上京放火なされしことありし。後、連一検校3)、御前に候ひて、「今度御陣(ごぢん)、洛中の騒ぎ、上下おぢ恐れたること前代未聞」と申し上げければ、「さあらうずる。さて、その恐れたる様子は」と仰せあれば、「されば、上京に火かかると見て、二条に候ひし者の妻、まづわが子をさへ連れてのけばすむと思ひ、三つ四つなる子を背中に負ひ、走りふためき4)四条の橋のもとまで逃げ来たり。あまり苦しく、『ちと子を下ろして休まん』と思ひ、地の上にだうと置いて見ければ、石臼にてぞ候ひける」。

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   貴人之行跡
一 信長公に対し公方御謀反の時節御出馬
  ありて上京放火なされし事ありし
  後連一検校御前に候て今度御陣洛中
  のさはぎ上下おちおそれたる事前代未
  聞と申上けれはさあらふする扨そのおそ
  れたるやうすはと仰あれはされは上京に
  火かかると見て二条に候し者の妻まつ
  我か子をさへつれてのけはすむとおもひ/n2-13l
  三つ四つなる子をせなかにおひしりふた
  めき四条の橋のもとまてにけきたりあまり
  くるしくちと子をおろしてやすまんと
  思ひ地のうへにたうとをいて見けれは石臼
  にてそ候ける/n2-14r
1)
織田信長
2)
足利義昭
3)
杉原連一
4)
「走りふためき」は底本「しりふためき」。諸本により訂正。
text/sesuisho/n_sesuisho2-021.txt · 最終更新: 2021/06/29 12:51 by Satoshi Nakagawa