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text:mogyuwaka:ndl_mogyuwaka06-05

蒙求和歌

第6第5話(95) 陸凱貴盛

校訂本文

陸凱貴盛

陸凱、字(あざな)は敬風、呉郡の人、丞相遜1)、族子なり。忠鯁にして大節あり。

孫皓といふ人2)、問ひていはく、「君一家、富み栄えて、朝に仕へて、皇恩にあづかる人、いくばくかある」と問ふに、答へていはく、「二相・五侯・将軍十余人あり」と答ふ。孫皓、「盛りなるかな」と言ひけり。

陸凱いはく、「君、賢にして、臣忠あるは、国の盛なるなり。父、慈あて3)、子、孝あるは4)、家の盛なり。今、政(まつりごと)荒れて、人弊(つひ)え、覆亡これ懼(お)づ。臣、何にか敢て盛りなりと言ひけむ」と言ひけり。

  一枝(ひとえだ)ももるる色なき春山(はるやま)の花の栄えはたぐひありやは

翻刻

陸凱(カイ)貴盛/d1-47r
陸凱アサナハ敬風呉郡ノ人丞相遊族子也忠鯁(カウニシテ)有リ大
節孫皓ト云人トヒテ云ク君一家トミサカヘテ朝ニツカヘテ
皇恩ニアツカル人イクハクカアルトトフニコタヘテ云ク二相五
侯将軍十余人アリトコタフ孫皓サカリナルカナト云ヒ
ケリ陸凱云君賢ニシテ臣忠アルハ国之盛ナルナリ文慈アテ子老アルハ家
之盛ナリ今政リコト荒レテ人弊エ覆亡(ハウ)是(コレ)懼(オツ)臣何ニカ敢テ言ケム盛リナリトト云ヒケリ
  ヒトエタモモルルイロナキハルヤマノ花ノサカヘハタクヒアリヤハ/d1-47l
1)
陸遜。「遜」は底本「遊」。諸本により訂正。
2)
三国時代、呉の第4代皇帝
3)
「父」は底本「文」とあり、薄墨で「父」と傍書。傍書に従う。
4)
「孝」は底本「老」とあり、薄墨で「孝」と傍書。傍書に従う。
text/mogyuwaka/ndl_mogyuwaka06-05.txt · 最終更新: 2017/12/17 19:09 by Satoshi Nakagawa