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text:mogyuwaka:ndl_mogyuwaka05-17

蒙求和歌

第5第17話(87) 孟光荊釵

校訂本文

孟光荊釵1)

孟光、容貌はなはだ醜かりけれども、徳行ことにすぐれたりき。郷里、多くこれを聘(よば)へども、たやすく許すことなし。

三十になる年、父母、「いかなる色をか思ふ」と問へば、「家貧しくとも、心ざま、梁鴻2)がごときの者を」と言へり。さて、梁鴻に合はせてけり。

常に荊(おどろ)の釵(かんざし)、布の3)裙を着て、おのが身をいやしくして、梁鴻がことをのみ重く思へり。食ひ物を勧むるに、机を上ぐること、眉に斉しく礼をなせり。梁鴻、世をすさまじく思ひ取りて、孟光とともに、覇陵山にこもり居にけり。

  秋風もあはれとや思ふ吹く方へとにもかくにもなびくおどろを4)

翻刻

孟光荊釼(サ)/d1-43l
孟光容皃ハナハタミニクカリケレトモ徳行コトニスクレタリキ
郷里ヲホクコレヲ聘(ヨハヘ)トモタヤスクユルスコトナシ卅ニナルトシ
父母イカナルイロヲカヲモフトトエハ家マツシクトモココロサマ梁
鴻カコトキノモノヲト云リサテ梁鴻ニアハセテケリツネニ
ヲトロノカムサシヌキキ裙ヲキテヲノカミヲイヤシクシテ梁
鴻カコトヲノミヲモクヲモヘリクヒモノヲススムルニツクヱヲアクルコ
ト斉(シク)眉(ニ)礼ヲナセリ梁鴻ヨヲスサマシクヲモヒトリテ孟光
トトモニ覇(ハ)陵山ニコモリヰニケリ/d1-44r
1)
底本「孟光荊釼」。書陵部本二本も同じ。『蒙求』により訂正。
3)
底本「ぬきき」。書陵部本二本により訂正。
4)
底本和歌なし。書陵部本(桂宮本)により補う。
text/mogyuwaka/ndl_mogyuwaka05-17.txt · 最終更新: 2018/01/27 20:01 by Satoshi Nakagawa