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蒙求和歌
第1第11話(11) 王粲覆棋 帰雁
校訂本文
王粲覆棋 帰雁
山陽人也 祖曾並為漢王公
魏の王粲、大臣に至る。若かりし時、人と連れてものへ行く道のほとりに、碑文を見る。連れたる人のいはく、「なんぢ、この碑文、一度(ひとたび)見て、そらに覚えてむや」と言ふ。王粲、後ろ向きて、そらに誦するに、一字も落さず。
王粲、昔、囲碁の局を破るを見る。王粲、もとのごとくに石を置きてけり。人、これを信ぜず。さらに石を置きて、一度見せて、後ろ向きて、他局に石を置かせて、後に、並べて見るに、石一つも置きたがへず。
すべて、一度も聞き、一度も見つることを忘るることなかりけり。
帰る雁(かり)隔つる雲の名残まで同じ跡をぞ思ひ連ねし
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王粲覆棋 帰雁 山陽人也 祖曾並為漢王公 魏王粲大臣ニ至ル若カリシ時人トツレテモノヘユク道ノホト リニ碑文ヲミルツレタル人ノ云汝チ此碑文ヒトタヒ見テソラ ニヲホエテムヤト云王粲ウシロムキテソラニ誦ルニ一字モ ヲトサス王粲昔囲碁ノ局ヲヤフルヲミル王粲モトノ如ニ 石ヲヲキテケリ人コレヲ信セスサラニ石ヲヲキテヒトタヒミセテ ウシロムキテ他局ニ石ヲヲカセテ後ニナラヘテ見ニ石ヒトツモヲキ タカヘススヘテヒトタヒモキキヒトタヒモミツルコトヲワスルル コトナカリケリ カヘルカリヘタツルクモノナコリマテヲナシアトヲソ思ヒツラネシ/d1-10l
text/mogyuwaka/ndl_mogyuwaka01-11.txt · 最終更新: 2017/10/22 15:32 by Satoshi Nakagawa