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text:mogyuwaka:ndl_mogyuwaka01-08

蒙求和歌

第1第8話(8) 汲黯開倉 早蕨

校訂本文

汲黯開倉 早蕨

汲黯、淮陽の人なり。汲黯に至るまで、七代、卿・大夫たりき。

時に、河内に火ありて、千余家、焼けにけり。おほやけ、汲黯を遣はして見せられけり。

還り参りて、申していはく、「河内の火屋(ひや)、ならべて焼け尽きぬ。歎く者、数を知らず。また、河内を過ぐるに、水旱を憂ふる貧しき者、万余家あり。臣、謹むで、御使ひの便りを得て、倉の粟を開きて、ことごとくに分かち与へ送りぬ。臣、すでにあやまてり。 矯制の罪に行はるべし」と申しけり。

おほやけ、「賢なり」と讃め給ひて、罪なし。

  雨そそぐ春の恵みのなかりせば焼け野の蕨(わらび)もの憂からまし1)

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汲黯開倉 早蕨/d1-9l
汲黯淮陽人也汲黯ニ至マテ七代卿大夫タリキ時ニ河内ニ
火アリテ千余家焼ニケリヲホヤケ汲黯ヲ遣見セラレ
ケリ還参リテ申云河内ノ火屋(ヒヤ)ナラヘテ焼ケツキヌ
歎クモノカスヲシラス又河内ヲスクルニ水旱ヲウレウル
マツシキモノ万余家アリ臣謹ムテ御使ノタヨリヲエテ倉ノ
粟ヲ開キテ悉クニ分チ与ヘヲクリヌ臣ステニアヤマテリ
矯制ノツミニヲコナハルヘシト申ケリヲホヤケ賢ナリトホメ給テツミナシ/d1-10r
1)
底本、歌を欠く。書陵部本(桂宮本)により補った。
text/mogyuwaka/ndl_mogyuwaka01-08.txt · 最終更新: 2017/10/10 13:00 by Satoshi Nakagawa