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text:karakagami:m_karakagami2-05

唐鏡 第二 周の始めより秦にいたる

5 周 昭王

校訂本文

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第四の主をば昭王と申しき。康王の御子なり。二十四年甲寅の年、江河泉池(かうかせんち)1)忽然(こつぜん)として汎漲(みなぎ)り、井の水までも満ちまさり、宮殿・舎宅・山川大地、ことごとくに震動し、その夜五色の光ありて、太微2)を貫きて、西方にあまねくして、青く紅なる色あり。

その時に昭王驚きて、太史3)蘇由(そいう)に問ひ給ふ。蘇由、答へてまうさく、「大きなる聖人4)ましまして、西方に生まれ給ふゆゑ、この瑞(ずい)見え侍るなり」。王、また問ひたまはく、「国におきて損なしや、いなや」。答へてまうさく、「損なかるべし。一千年の後にぞ、声教(しやうげう)この国にかうぶらしむべし」と申せり。

この御時、王道衰微して諸侯とも朝ぜず。南に巡狩5)し給ひて、膠舟(かうしう)に乗りてあそばせ給ふほどに、江の中に沈みてかへり給はざりし。あさましかりしことなり。在位五十年とぞ承りし。

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第四の主をは昭王と申き康王の御子なり廿四年甲寅
のとし江河泉池(カウカセンチ)(池イ)忽然(コツゼン)として汎漲(ミナキ)り井の水まてもみ
ちまさり宮殿舎宅山川大地ことことくに震動し其夜
五色の光ありて大微をつらぬきて西方にあまねく
して青く紅成色あり其時に昭王おとろきて大史(タイシ)蘇(ソ)
由(イウ)に問給ふ蘇由こたへてまうさく大なる聖人ましまし
て西方にむまれ給ゆへこの瑞(スイ)みへ侍なり王又問たまはく
国におきて損なしやいなやこたへてまうさく損なかるへし/s36l・m63

https://kotenseki.nijl.ac.jp/biblio/100182414/viewer/36

一千年の後にそ声教(シヤウケウ)この国にかうふらしむへしと申せり
この御時王道衰微(スイビ)して諸侯とも朝せす南に巡狩(カリ)し
給て膠舟(カウシウ)にのりてあそはせ給ほとに江の中にしつみて
かへり給はさりしあさましかりし事也在位五十年
とそうけ給はりし/s37r・m64

https://kotenseki.nijl.ac.jp/biblio/100182414/viewer/37

1)
「池」は底本「地」。異本注記により訂正。
2)
底本表記「大微」
3)
底本表記「大史」
4)
釈迦
5)
底本「狩」に「カリ」と注。
text/karakagami/m_karakagami2-05.txt · 最終更新: 2022/11/09 23:13 by Satoshi Nakagawa