text:kara:m_kara004
唐物語
第4話 梁鴻といふ人孟光にあひ具して・・・
校訂本文
昔、梁鴻といふ人、孟光にあひ具して、年ごろ住みけり。
この孟光、世にたぐひなくみめ悪(わろ)くて、これを見る人、心を惑はして騒ぐほどなりけれど、この夫をまたなきものに思ひて、かしづき敬ふこと、思ふにも過ぎたりけり。朝な夕なに飯匙(いひがひ)取りて、笥子(けこ)の器物(うつはもの)に盛りつつ、眉の上(かみ)に捧げて、懇(ねんご)ろに勧めければ、「斉眉(せいこ)の礼」とぞ、今は言ひ伝へたる。
さもあらばあれ玉の姿も何ならずふた心なき妹がためには
心ざしだに浅からずば、玉の姿・花の形ならずとも、まことに口惜しからじかし。
翻刻
むかし梁鴻といふ人孟光にあひくしてとし ころすみけりこの孟光世にたくひなくみ めわろくてこれをみる人心をまとはしてさはく ほとなりけれとこの夫をまたなきものに/m313
思てかしつきうやまふこと思にもすきたり けりあさなゆふなにいゐかひとりてけこの うつは物にもりつつまゆのかみにささけて ねんころにすすめけれは斉眉(セイコ)の礼とそ いまはいひつたへたる さもあらはあれ玉のすかたもなにならす ふた心なきいもかためには 心さしたにあさからすは玉のすかた花のかた ちならすともまことにくちおしからしかし/m314
text/kara/m_kara004.txt · 最終更新: 2014/11/03 20:59 by Satoshi Nakagawa