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十訓抄 第七 思慮を専らにすべき事
7の8 成明親王の位につかせ給ひたりけるに女御あまた候はせ給ひける中に・・・
校訂本文
成明親王1)の位につかせ給ひたりけるに、女御あまた候はせ給ひける中に2)、広幡の御息所3)は、ことに御心ばせあるさまに、御門も思しめしたり。
あふさかも はては行き来の せきもゐず たづねてとひこ きなば帰さじ
といふ歌を、同じ様に書かせ給ひて、方々に奉らる。
御返事をさまざまに聞こえさせ給ひける中に、広幡は薫物(たきもの)をぞ、参らせ給ひける。いみじかりけり。異(こと)御方には沓冠(くつかぶり)の歌とも御覧じ分かざりけるにや。
この御息所、御心おきて賢くおはしましけるゆゑに、かの御門の御時、梨壺の五人に仰せて、『万葉集』をやはらげられけるも、この御すすめとぞ。順4)、筆をとれりける/k123
翻刻
八成明親王の位に付せ給たりけるに、女御あまた候はせ給/k122
ける中々、広幡の御息所は、ことに御心はせあるさまに、御門も 思めしたり、 あふさかもはてはゆききのせきもゐす、たつねてとひこ きなはかへさし と云哥を、同様にかかせ給て方々に奉らる、御返事をさ まさまに聞させ給ける中に広幡は、たきものをそまいら せ給ける、いみしかりけり、こと御方にはくつかふりの 哥とも御覧しわかさりけるにや、此御息所御心をきて 賢くおはしましけるゆへに、彼帝の御時梨壺の五人に 仰せて万葉集をやはらけられけるも、此御すすめとそ 順筆をとれりける/k123
text/jikkinsho/s_jikkinsho07-08.1454517627.txt.gz · 最終更新: 2016/02/04 01:40 by Satoshi Nakagawa