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text:ise:sag_ise023c

伊勢物語

第23段(3) まれまれかの高安に来てみれば・・・

校訂本文

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まれまれかの高安に来てみれば、始めこそ心にくくもつくりけれ、今はうちとけて、手づから飯匙(いひがひ)取りて、笥子のうつは物に盛りけるを見て、心憂がりて、行(い)かずなりにけり。

さりければ、かの女、大和の方を見やりて、

  君があたり見つつを居(を)らん生駒山雲な隠しぞ雨は降るとも

と言ひて見出だすに、からうじて大和人、「来ん」と言へり。喜びて待つに、たびたび過ぎぬれば、

  君来むといひし夜ごとに過ぎぬれば頼まぬものの恋ひつつぞ経る

と言ひけれど、男、住まずなりにけり。

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挿絵

第23段(3)

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まれまれかのたかやすにきてみれははし
めこそこころにくくもつくりけれいまは
うちとけててつからいゐかひとりてけ
このうつは物にもりけるを見て心う
かりていかすなりにけりさりけれはかの
女やまとのかたを見やりて
  きみかあたりみつつををらんい駒山
  くもなかくしそ雨はふるとも
といひてみいたすにからうしてやまと/s39r
ひとこんといへりよろこひてまつに
たひたひ過ぬれは
  君こむといひし夜ことにすきぬれは
  たのまぬもののこひつつそふる
といひけれとおとこすますなりにけり/s39l

https://kokusho.nijl.ac.jp/biblio/200024817/39?ln=ja

【絵】/s40r

https://kokusho.nijl.ac.jp/biblio/200024817/40?ln=ja

text/ise/sag_ise023c.txt · 最終更新: 2023/12/18 23:04 by Satoshi Nakagawa