text:ise:sag_ise009b
第9段(2) 行き行きて駿河の国に至りぬ・・・
校訂本文
行き行きて、駿河の国に至りぬ。宇津(うつ)の山に至りて、わが入らんとする道はいと暗う細きに、蔦(つた)・楓(かへで)は茂り、もの心細く、「すずろなる目を見ること」と思ふに、修行者(すぎやうざ)会ひたり。「かかる道は、いかてかいまする」と言ふを見れば、見し人なりけり。京に、「その人の御もとに」とて、文(ふみ)書きてつく。
駿河なる宇津の山辺のうつつにも夢にも人に逢はぬなりけり
挿絵
翻刻
ゆきゆきてするかのくににいたりぬうつの 山にいたりてわかいらんとするみちはい とくらうほそきにつたかへてはしけり物 心ほそくすすろなるめを見ることと思ふ にす行者あひたりかかるみちはいかてかいま するといふをみれはみし人なりけり京 にその人の御もとにとてふみかきてつく するかなるうつの山辺のうつつにも 夢にもひとにあはぬなりけり/s19r
【絵】/s19l
text/ise/sag_ise009b.txt · 最終更新: 2023/11/25 11:42 by Satoshi Nakagawa