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一言芳談抄 巻之上
4 高野の明遍僧都善光寺参詣の帰りあしに法然上人に対面・・・
校訂本文
高野の明遍僧都(みやうへんそうづ)、善光寺参詣の帰りあしに、法然上人に対面、僧都問うて云はく、「いかがして今度生死(しやうじ)を離るべく候ふ」。上人云はく、「念仏申してこそは」。問ひ給はく、「まことにしかり。ただし、妄念(まうねん)おこるをば、いかがつかまつり候ふべき」。上人答へて云はく、「妄念おこれども、本願力(ほんぐわんりき)にて往生するなり」。僧都、「さうけたまはりぬ」とて出で給ひぬ。
上人つぶやきて云はく、「『妄念おこさずして往生せん』と思はん人は、『生まれつきの目鼻を取り捨てて念仏申さん』と思ふがごとし」。
翻刻
高野(かうや)の明遍僧都(みやうへんそうづ)。善光寺(ぜんくわうじ)参詣(さんけい)のかへりあしに法然(ほうねん) 上人(しやうにん)に対面僧都(そうづ)問云(とふていはく)いかがして今度(こんど)生死(しやうじ)をはな るへく候上人云念仏(ねんふつ)申てこそは問給(とひたま)はく誠(まこと)にしかり但(ただし/ndl1-3r
妄念(まうねん)おこるをば。いかが仕候べき。上人答云(こたへていはく)妄念(まうねん)おこれ ども本願力(ほんぐはんりき)にて往生(わうじやう)するなり僧都さうけたま はりぬとて出(いで)給ぬ上人つぶやきて云妄念おこさす して往生(わうじやう)せんとおもはん人はむまれつきの目鼻(めはな)を 取(とり)すてて念仏(ねんぶつ)申さんと思ふかことし明禅法印云(みやうぜんほうゐんいはく)/ndl1-3l
text/ichigonhodan/ndl_ichigon004.txt · 最終更新: 2023/08/04 10:41 by Satoshi Nakagawa