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text:chomonju:s_chomonju686

古今著聞集 魚虫禽獣第三十

686 保延のころ宰相中将なりける人の乳母猫を飼ひけり・・・

校訂本文

保延のころ、宰相中将なりける人の乳母、猫を飼ひけり。その猫高さ一尺、力の強くて綱を切りければ、繋ぐこともなくて、放ち飼ひけり。十歳に余りける時、夜に入りて見ければ、背中に光あり。

かの乳母、常にこの猫に向ひて、「なんぢ死なん時、われに見ゆべからず」と教へければ、いかなるゆゑにか、おぼつかなきことなり、十七になりける年、行方知らず失せにけり。

翻刻

保延の比宰相中将なりける人の乳母猫をかひけり
其猫たかさ一尺力のつよくて綱をきりけれはつなく
こともなくてはなち飼けり十歳にあまりける時夜
に入てみけれはせなかに光あり彼乳母つねに此猫に/s536r
向て汝しなん時われにみゆへからすとをしへけれは
いかなるゆへにかおほつかなき事なり十七に成ける
年行方しらすうせにけり/s536l

http://kotenseki.nijl.ac.jp/biblio/100190287/viewer/536

text/chomonju/s_chomonju686.txt · 最終更新: 2021/01/16 23:09 by Satoshi Nakagawa