text:chomonju:s_chomonju638
古今著聞集 飲食第二十八
638 九条前内大臣家に壬生二位参りて和歌の沙汰ありけるに・・・
校訂本文
九条前内大臣(基家)1)家に、壬生二位(家隆)2)参りて、和歌の沙汰ありけるに、二月のことなりけるに、雪に甘葛(あまづら)をかけて二品に勧められけり。食ひ果てて、「この雪、なほなほ候はば、給はりて、二条中納言(定高)3)のもとへつかはし候はむ。かの卿は雪食ひにて候ふなり」と申しければ、すなはち硯の蓋にもちて出だされたりけるを、つかはしたりければ、かの卿の返しに、
心ざし髪の筋ともおぼしけり頭(かしら)の雪か今のこの雪
「詠まれにたり」とて、二品しきりに興に入りけり。
翻刻
九条前内大臣(基家)家に壬生二位(家隆)参て和哥のさたあり けるに二月の事なりけるに雪にあまつらをかけて 二品にすすめられけり食はててこの雪猶猶候はは給て 二条中納言(定高)のもとへつかはし候はむ彼卿は雪くひに て候なりと申けれはすなはち硯蓋にもちていたされ たりけるをつかはしたりけれは彼卿の返しに 心さしかみのすちともおほしけりかしらの雪かいまのこの雪 よまれにたりとて二品しきりに興に入けり/s499r
text/chomonju/s_chomonju638.txt · 最終更新: 2020/12/22 21:02 by Satoshi Nakagawa