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text:chomonju:s_chomonju625

古今著聞集 飲食第二十八

625 保延三年九月二十三日仙洞に行幸ありて十番の競馬を御覧ぜられけり・・・

校訂本文

保延三年九月二十三日、(宝金剛院・仁和寺)仙洞1)に行幸2)ありて、十番の競馬(くらべうま)を御覧ぜられけり。日暮れければ、二十四日にぞ六番以下(いげ)をば御覧じける。次第のことども行はれて、二十五日、まづ御遊(ぎよゆう)あり。主上出御。院3)は簾中に候ひけり。笙、内大臣4)・権大納言5)、笛、宰相中将実衡朝臣6)・忠基朝臣7)・中将公能朝臣8)、篳篥(ひちりき)、左衛門佐季兼9)、琵琶、左大臣10)・新大納言11)、箏、左衛門督12)、和琴、宮内卿13)、拍子、左兵衛督14)、双調・平調、常の御遊には似ず平調楽数返(すへん)ありけり。盃酌数献の後、今様・神楽・朗詠などありけり。

人々酔(ゑ)ひて後、白薄様(しろうすやう)歌ひて、殿上人・上達部、下臈より乱舞。摂籙15)・左大臣16)なども舞ひ給ひける。ためし少なく侍ることにや。その後また数返ありて、また糸竹の興もありけり。また白薄様歌ひて、上達部ばかりぞ舞ひける。殿下17)、舞ひ給ひて逃げさせ給ひければ、人々も座を立たれけり。

その後、和歌の会あり。題は「菊契千秋(菊千秋を契る)」とぞ侍りける。按察大納言18)、序をば奉りけり。その後、勧賞(けんじやう)・御引出物ありて、還御なりにけり。

翻刻

保延三年九月廿三日(宝金剛院/仁和寺)仙洞に行幸ありて十
番の競馬を御覧せられけり日くれけれは廿四日にそ
六番以下をは御らんしける次第の事ともおこなはれ
て廿五日先御遊あり主上出御院は簾中に候けり
笙内大臣権大納言笛宰相中将実衡朝臣忠基
朝臣中将公能朝臣篳篥左衛門佐季兼琵琶左/s491l

http://kotenseki.nijl.ac.jp/biblio/100190287/viewer/491

大臣新大納言箏左衛門督和琴宮内卿拍子
左兵衛督双調平調つねの御遊には似す平調楽
数返ありけり盃酌数献の後今様神楽朗詠なと
ありけり人々酔てのち白薄様うたひて殿上人上
達部下臈より乱舞摂録左大臣なとも舞給ひける
ためしすくなく侍ことにやそののち又数反ありて又
糸竹の興もありけり又白薄様うたひて上達部
はかりそまいける殿下舞たまひて逃させ給けれは
人々も座をたたれけり其後和哥会あり題は菊
契千秋とそ侍ける按察大納言序をはたてまつり
けりそののち勧賞御引出物ありて還御なりにけり/s492r

http://kotenseki.nijl.ac.jp/biblio/100190287/viewer/492

1)
鳥羽院の御所。仁和寺宝金剛院。
2)
崇徳天皇の行幸。
3)
鳥羽上皇
4)
藤原頼長
5)
源雅定
6)
藤原実衡
7)
藤原忠基
8)
藤原公能
9)
藤原季兼
10) , 16)
源有仁
11)
藤原実能
12)
藤原宗輔
13)
源有賢
14)
藤原宗能
15) , 17)
藤原忠通
18)
藤原実行
text/chomonju/s_chomonju625.txt · 最終更新: 2020/12/01 23:10 by Satoshi Nakagawa