text:chomonju:s_chomonju586
古今著聞集 怪異第二十六
586 同じき四年四月二十九日未時ばかりに辻風吹きたりけり・・・
校訂本文
同じき四年1)四月二十九日未時ばかりに、辻風(つじかぜ)吹きたりけり。九条の方よりおこりけるが、京中の家、あるいはまろび、あるいは柱ばかり残れる。死ぬる者も数を知らず。蔀(しとみ)・遣戸(やりど)・さらぬ雑物、雲の中に入りて、風にしたがひて飛びけり。ある所には雨降り、ある所には雷鳴り、九条坊門東洞院辺には雪も降りたりけり。
そのころ、かかる風たびたび吹きけれども、このたびは第一におびたたしかりけり。たびごとに乾の方より巽へぞ吹きける。恐しきこと、いふばかりなかりけり。
翻刻
同四年四月廿九日未時はかりに辻風ふきたりけり九条 のかたよりおこりけるか京中の家或はまろひ或は柱は かり残れる死ぬるものも数をしらす蔀遣戸さらぬ雑物 雲の中に入て風に随て飛けり或所には雨ふり或所 には雷なり九条坊門東洞院辺には雪も降たりけり/s466r
其比かかる風たひたひふきけれともこのたひは第一に をひたたしかりけりたひことに乾の方より巽へそ 吹けるおそろしき事いふはかりなかりけり/s466l
1)
治承四年。585参照
text/chomonju/s_chomonju586.txt · 最終更新: 2020/11/08 11:10 by Satoshi Nakagawa