text:chomonju:s_chomonju385
古今著聞集 画図第十六
385 仁和寺の御室といふは寛平法皇の御在所なり・・・
校訂本文
仁和寺の御室といふは、寛平法皇1)の御在所なり。その御所に、金岡2)筆をふるひて絵かける中に、ことにすぐれたる馬形なん侍るなる。
その馬、夜々離れて、近辺の田を食ひけり。何者のすると知れるものなくて過ぎ侍りけるほどに、件(くだん)の馬の足に土付きて、濡れ濡れとあること、たびたびに及びける時、人々怪しみて、「この馬のしわざにや」とて、壁に描きたるに、馬の目を彫りくじりてけり。
それより眼なくなりて、田食ふこととどまりにけり。
翻刻
仁和寺御室といふは寛平法皇の御在所なり其御所 に金岡筆をふるひて絵かける中にことに勝たる馬 形なん侍なる其馬夜々はなれて近辺の田を食 けりなにもののするとしれるものなくて過侍ける程に 件の馬の足に土つきてぬれぬれとある事たひたひにお よひける時人々あやしみてこの馬のしわさにやとて 壁にかきたるに馬の目をほりくしりてけりそれ より眼なくなりて田食事ととまりにけり/s293r
text/chomonju/s_chomonju385.txt · 最終更新: 2020/05/13 23:20 by Satoshi Nakagawa