text:chomonju:s_chomonju373
古今著聞集 相撲強力第十五
373 いづれの年にか相撲節に勝岳と重義合ひたりけるに・・・
校訂本文
いづれの年にか、相撲節に、勝岳と重義1)合ひたりけるに、重義2)が尻を木にすらせけるを、常世見て、「ただ今に大事出で来ぬ」と言ひけるに、果して重義、木を踏みて、勝岳にかかりければ、勝岳まろびにけり。小野宮右府3)、腹立ちて出で給ひにけり。随身をして人をはらはせられけるほどに、秦兼時が冠もうち落されにけり。今年、左の相撲多く負けけるを、右府あざけらるるよしを聞きて、左の方より夜の間に、勝岳負くべきよしの祈りをせさせられにけり。
またこの勝岳、常正に合ひたりけるに、勝岳を火焼屋(ひたきや)に投げ付けたりけり。後のたびは勝負を決せず。公保・常時聞きて、「奇異のことなり。かくばかりの相撲、声を出だして勝負せざること、いまだ聞かざることなり」。世の人、推することの侍りけるとかや。
翻刻
いつれの年にか相撲節に勝岳と重義(茂イ)あひた りけるに重義(茂イ)か尻を木にすらせけるを常世見 てたたいまに大事出きぬといひけるに果して重義 木を踏て勝岳にかかりけれは勝岳まろひにけり小野宮 右府腹立て出給にけり随身をして人をはらはせ られける程に秦兼時か冠もうちおとされにけり今年 左の相撲おほく負けるを右府あさけらるるよしを ききて左の方より夜のあひたに勝岳負へき由の 祈をせさせられにけり又この勝岳常正にあひた りけるに勝岳を火焼屋になけ付たりけり後のた/s272l
http://kotenseki.nijl.ac.jp/biblio/100190287/viewer/272
ひは勝負を決せす公保常時ききて奇異の事也 かくはかりの相撲声を出して勝負せさる事いまた きかさる事也世の人推する事の侍けるとかや此事/s273r
text/chomonju/s_chomonju373.txt · 最終更新: 2020/05/08 12:31 by Satoshi Nakagawa