text:chomonju:s_chomonju289
古今著聞集 能書第八
289 知足院入道殿法性寺殿と久安のころより御仲心よからずおはしましける時・・・
校訂本文
知足院入道殿1)、法性寺殿2)と、久安のころより御仲心よからずおはしましける時、法性寺殿参らせ給ひたりけるに、こころみ申されん料(れう)にや、四枚屏風を一帖召し寄せさせ給ひて、「これに物書きて給へ」と申されたりけるに、御硯引き寄せさせ給ひて、墨をしばし磨らせ給ひて、中にも小さかりける筆を取らせ給ひて、「紫蓋之峰嵐疎」といふ句を、大文字にて四枚に書き満てさせ給ひて、進(まゐ)らせられたりければ、禅閤(ぜんかう)御覧じて、「これは重物なり」とて、やがて宝蔵に収められけるとぞ。
翻刻
知足院入道殿法性寺殿と久安の比より御中心 よからすをはしましける時法性寺殿まいらせ給たり けるに心み申されんれうにや四枚屏風を一帖めし よせさせ給てこれに物書てたまへと申されたりけるに 御硯引よせさせ給て墨をしはしすらせ給て中にも ちいさかりける筆をとらせ給て紫蓋之峯嵐疎と 云句を大文字にて四枚に書みてさせ給てまいらせられたり/s201r
けれは禅閤御覧してこれは重物なりとてやかて 宝蔵に収られけるとそ/s201l
text/chomonju/s_chomonju289.txt · 最終更新: 2020/04/10 15:46 by Satoshi Nakagawa