text:chomonju:s_chomonju277
古今著聞集 管絃歌舞第七
277 知足院殿仰せられけるは万秋楽ゆるるかに吹くべしと人はみな知りけれども・・・
校訂本文
知足院殿1)、仰せられけるは、「万秋楽(まんじうらく)2)ゆるるかに吹くべしと、人はみな知りけれども、真実は3)責め伏せて吹くべきなり。頼能4)もさぞ吹きける。あひ継ぎて、大納言宗俊卿5)も、けすらふ時に責め伏せて吹くなり」。
白河院6)の御時、新院7)三条殿にわたらせ給ひしに、中門の廊にして、新院、件(くだん)の序を吹かせ給ふに、宗能卿御供してつかうまつる。その時も責め伏せてぞ吹かせ給ひける。
白河院、寝殿の御簾をかかげて、再三御感ありて、「今一度、今一度」と仰せらるること五・六度に及びけり。故実を知ろし召しては感ありけるこそ、いみじき御事なれ。
翻刻
知足院殿仰られけるは万楽ゆるるかに吹へしと 人はみなしりけれとも真実に(は)せめふせて吹へきなり 頼能もさそ吹けるあひつきて大納言宗俊卿もけす らふ時に責伏て吹なり 白河院御時新院三条殿にわたらせ給しに中門の廊/s188r
にして新院件序を吹せたまふに宗能卿御共してつか うまつる其時も責伏てそふかせ給ける白河院寝殿 の御簾を褰て再三御感ありて今一度今一度と仰らるる事 五六度に及けり故実をしろしめしては感ありけるこそ いみしき御事なれ同院箏をひかせ給けるおり初夜の/s188l
text/chomonju/s_chomonju277.txt · 最終更新: 2020/04/07 12:09 by Satoshi Nakagawa