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text:chomonju:s_chomonju222

古今著聞集 和歌第六

222 西音法師は昔後鳥羽院の西面に平時実とて幼くより候ひし者なり・・・

校訂本文

西音法師は、昔、後鳥羽院1)の西面(さいめん)に、平時実とて、幼くより候ひし者なり。

世代はりて後、嘉禎ごろ、五十首の歌を詠みて、遠所の御所2)に藤原友茂が候ひけるに送りたりけるを、君、聞こし召して、叡覧ありて、みづから十余首の御点を下されける中に、

  見ればまづ涙流るる水無瀬川いつより月のひとりすむらん

この歌を、ことにあはれがらせおはしましけりとぞ。

さて、御自筆に阿弥陀三尊を文字にあそばして下し賜はせける。今にかたじけなき御形見とて、常に拝み参らせ侍りとなん。

翻刻

西音法師は昔後鳥羽院の西面に平時実とておさなく
より候しものなり世かはりて後嘉禎比五十首の哥をよみて
遠所の御所に藤原友茂か候けるにをくりたりけるを君きこし
めして叡覧ありてみつから十余首の御点をくたされける中に
 見れはまつ涙なかるる水無瀬川いつより月のひとりすむらん
此哥をことにあはれからせおはしましけりとそさて御自筆に阿
弥陀三尊を文字にあそはしてくたし給はせけるいまに忝
き御かたみとて常にをかみまいらせ侍となん/s155l

http://kotenseki.nijl.ac.jp/biblio/100190287/viewer/155

1)
後鳥羽天皇
2)
後鳥羽院の配所、隠岐。
text/chomonju/s_chomonju222.txt · 最終更新: 2020/03/20 12:15 by Satoshi Nakagawa