text:chomonju:s_chomonju196
古今著聞集 和歌第六
196 徳大寺の右大臣うちまかせては言ひ出でがたかりける女房のもとへ・・・
校訂本文
徳大寺の右大臣1)、うちまかせては言ひ出でがたかりける女房のもとへ、獅子の形(かた)を作れりける2)茶碗の枕を奉るとて、薄様のなかへを破(や)りて、この歌を書きて、思ひかけぬ間(はざま)に隠して入れられたりける、
わびつつはなれだに君に床慣(とこな)れよかはさぬ夜半(よは)の枕なりとも
女房、「この枕、ただにはあらじ」とて、とかくしてこの歌を求め出だされたりける、いみじく色深し3)。
これらは、歌をつかはして、心中をあらはせる類なり。
翻刻
徳大寺の右大臣うちまかせてはいひ出かたかりける女房のもとへ 師子のかたをつくれけり茶碗の枕をたてまつるとて薄様の なかへをやりて此哥を書て思かけぬはさまにかくして入られたりける わひつつはなれたに君にとこなれよかはさぬ夜はの枕なりとも 女房此枕たたにはあらしとてとかくして此哥を求出されたり けるいみしくけふかしこれらは哥をつかはして心中をあらはせる 類なり/s141l
text/chomonju/s_chomonju196.txt · 最終更新: 2020/03/14 02:55 by Satoshi Nakagawa