text:chomonju:s_chomonju181
古今著聞集 和歌第六
181 昔大納言なりける人の御門に奉らんとてかしづきける女を内舎人なる者盗みて・・・
校訂本文
昔、大納言なりける人の、御門に奉らんとてかしづきける女(むすめ)を、内舎人(うどねり)なる者盗みて、陸奥国(みちのくに)に去にけり。
安積(あさか)の郡(こほり)安積の山に庵結びて住みける1)ほどに、男のほかへ行きたりけるまに2)、立い出でて、山の井に形を映して見るに、ありしにもあらずなりにける影を恥ぢて、
浅香山影さへ見ゆる山の井の浅くは人を思ふものかは
と木に書き付けて、みづからはかなくなりにけりと、『大和物語3)』に記せり。
翻刻
むかし大納言なりける人の御門にたてまつらんとてかしつきける 女をうとねりなるものぬすみてみちの国にいにけりあさかの 郡あさかの山に庵結て住けり程に男のほかへゆきたりけり まに立いてて山の井にかたちをうつしてみるにありしに もあらす成にける影をはちて 浅香山かけさへみゆる山の井のあさくは人を思ふものかは と木にかきつけてみつからはかなく成にけりとやまともの かたりにしるせり/s135r
text/chomonju/s_chomonju181.txt · 最終更新: 2020/03/05 16:11 by Satoshi Nakagawa