text:chomonju:s_chomonju128
古今著聞集 文学第五
128 少納言入道信西が家にて人々集まりて遊びけるに・・・
校訂本文
少納言入道信西1)が家にて人々集まりて遊びけるに、「夜深催管絃(夜深けて管絃を催す)」といふ題にて当座の詩を作りけるに、みな人は作り出だしたりけるに、敦周朝臣2)、案じ出ださぬ気色にてほど経(へ)ければ、満座興さめてけり。
あまりにすみて侍りければ、有安3)が座の末にありけるに、入道、朗詠すべきよしを勧めければ、「第一第二弦索々(第一第二の弦は索々)」といふ句を詠じたりけり。この心、自然にこの題に寄り来たりけるにや、敦周朝臣、やがて作り出だしたりけり。
竜吟水暗両三曲 竜は水暗に吟ず両三の曲
鶴唳霜寒第四声 鶴は霜寒に唳く第四の声
と作りたりける。ことにその興ありて、人々感歎しけり。かの朗詠の心、いと相違なきにや。
翻刻
少納言入道信西か家にて人々あつまりてあそひけるに 夜深催管絃といふ題にて当座の詩を作けるに/s98r
皆人は作いたしたりけるに敦周朝臣案しいたさぬけ 色にて程へけれは満座興醒てけりあまりにすみて侍 けれは有安か座のすゑにありけるに入道朗詠すへき よしをすすめけれは第一第二弦索々といふ句を詠し たりけり此心自然に此題によりきたりけるにや敦周 朝臣やかて作いたしたりけり龍吟水暗両三曲鶴唳 霜寒第四声とつくりたりける殊其興ありて 人々感歎しけり彼朗詠の心いと相違なきにや/s98l
text/chomonju/s_chomonju128.txt · 最終更新: 2020/02/15 18:35 by Satoshi Nakagawa