rhizome:正徹物語
正徹物語
しょうてつものがたり
成立
成立は、内容から正徹68歳時の文安5年(1448)と70歳時の宝徳2年(1450)の両説がある。
「物語」と題されるように聞き書きの体裁をとるが、前半を『徹書記物語』、後半を『清巌茶話』とする伝本があり、全巻聞き書きとする説と、前編が正徹自筆で後編が聞き書きとする説がある。なお、筆録者には門弟の正弘や蜷川智蘊が推測されている。
内容
内容は、技法、歌体論、歌語の解説、歌会での作法・故実、古歌・自詠歌の解説、歌人の逸話と多岐にわたり、雑多に並べられている。読者を初学者と想定していると考えられ、比較的わかりやすく、具体的な記述が多いが、高齢のためか典拠が分からない歌や記憶違いも見られる。
諸本
「正徹物語」と題する巻を分けないもの、「徹書記物語」・「正広筆記」・「樵雑記」とする上巻(1〜106段)のみのもの、「清巌茶話」とする下巻(1〜213段)のみのものの三種がある。中でも、「徹書記物語」の伝本が多い。
参考文献
注釈書・影印
- 日本古典文学大系65『歌論集・能楽論集』(岩波書店・久松潜一他・昭和63年)
- 和泉影印叢刊32(和泉書院・田中裕・昭和57年)
- 寛政2年版本の影印
- 歌論歌学集成11(三弥井書店・稲田利徳・平成13年)
研究書・論文
- 稲田利徳『正徹の研究 中世歌人研究』(笠間書院・昭和53年)
- 井上宗雄『中世歌壇史の研究 室町前期』改訂新版(風間書房・昭和59年)
- 田中新一「正徹の出家年次―正徹研究ノート―」(国語と国文学54巻3号・昭和52年3月)
- 稲田利徳「「正徹物語」掲載の正徹歌の評釈 上〜下)(岡山大学教育学部研究収録54〜56号 昭和55年7月、8月、昭和56年1月)
- 村尾誠一『日本の作家23 残照の中の巨樹 正徹』(新典社・平成18年)
rhizome/正徹物語.txt · 最終更新: 2014/10/07 04:00 by Satoshi Nakagawa