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text:yotsugi:yotsugi042

世継物語

第42話 宇治殿の御夢に大柑子を三つ御覧じたりけるを・・・

校訂本文

今は昔、宇治殿の御夢に、大柑子を三つ御覧じたりけるを、夢解きに問はせ給ひたりければ、「あめ牛、三つ出で来なん」と申したりけるに、実に、人参らせたりければ、御前につなぎて、興じ御覧じけるに、そのころ、りうさ1)の三位とて、いみじき人ありけり。

参りて、この牛どもを見て、「なでう牛にかさぶらふ」と申す。「かうかう。夢に見えてあるなり」と仰せられければ、「目出度き御夢を、悪(わろ)く合はせたり。この御夢、合はせん」とて、よき日をとりて、日かくしの間に、うるはしう装束きて、この御夢を語らせ給ひて、合はす。

「三代の御門の関白をせさせ給はん」と合はせ申したりける。実に三代の御門の御後ろ見せさせ給ひて、四代といふ後、三条院の御時、うちにこもらせ給ひにけり。

夢は合せからなり。

翻刻

いまは昔宇治殿の御夢に大かう子を三御覧したりけ
るを夢ときにとはせ給たりけれはあめ牛三いてきなん
と申たりけるに実に人まいらせたりけれは御前につ
なきて興し御覧しけるに其比りうさ(宰相有国)の三位とてい
みしき人有けりまいりて此牛共をみてなでう牛にか
さふらふと申かうかう夢に見えてある也と仰られけれは/22ウ
目出度御夢をわろくあはせたり此御夢あはせんとて
よき日をとりて日かくしのまにうるはしう装束て此
御夢をかたらせ給てあはす三代の御門の関白をせさ
せ給はんとあはせ申たりける実に三代の御門の御うし
ろみせさせ給て四代といふ後三条院の御時うちにこも
らせ給にけり夢は合せから也/23オ
1)
底本「宰相有国」と傍書
text/yotsugi/yotsugi042.txt · 最終更新: 2014/09/25 02:38 by Satoshi Nakagawa