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text:towazu:towazu4-27

とはずがたり

巻4 27 これにも七日こもりて出で侍るにさても二見浦はいづくのほどにか・・・

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これにも七日こもりて、出で侍るに、「さても、二見浦(ふたみのうら)はいづくのほどにか。御神、心をとどめ給ひけるもなつかしく」など申すに、しるべ給ふべきよし申して1)、宗信神主2)といふ者を付けたり。具して行くに、清き渚、蒔絵3)の松、雷(いかづち)の蹴裂き給ひける石など見るより、佐美(さび)の明神と申す社は渚におはします。それより舟に乗りて、答志(たうし)の島4)・御饌(ごせん)の島・通る島など見に行く。

御饌の島とは海松(みる)の多く生ゆるを、この宮の禰宜参りて、摘みて、御神の御饌供ふる所なり。通る島とは、上に屋の棟のやうなる石、うつろに覆ひたる中海(なかうみ)にて、舟をさし通すなり。

海漫々(かいまんまん)たる気色、いと見所多く侍りき。

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これにも七日こもりていて侍にさてもふたみのうらはいつくのほと
にか御神心をととめ給けるもなつかしくなと申にしるへ給へきに
し申てむねのふ神主といふ物をつけたりくしてゆくにき
よきなきささきゑの松いかつちのけさき給けるいしなと/s194l k4-57

http://kotenseki.nijl.ac.jp/biblio/100218515/viewer/194

みるよりさひの明神と申やしろはなきさにおはしますそれ
よりふねにのりてたかしのしま御せんのしまとをるしまなとみ
に行御せんのしまとはみるのおほくをゆるをこの宮のねき
まいりてつみて御神の御せんそなうる所なりとをるしまとは
うへにやのむねのやうなるいしうつろにおおいたるなかうみにて
ふねをさしとをすなりかいまんまんたる気色いとみ所おほく
侍きまことやこあさくさの宮と申はかかみつくりの明神のて/s195r k4-58

http://kotenseki.nijl.ac.jp/biblio/100218515/viewer/195

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1)
「よし申して」は底本「にし申」。
2)
荒木田宗信
3)
「蒔絵」は底本「さきゑ」。
4)
「答志の島」は底本「たかしのしま」。
text/towazu/towazu4-27.txt · 最終更新: 2019/10/13 19:13 by Satoshi Nakagawa