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text:towazu:towazu2-08

とはずがたり

巻2 8 まことや六条殿の長講堂造り立てて四月に御移徙・・・

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まことや、六条殿の長講堂(ちやうかうだう)造り立てて、四月に御移徙(わたまし)、御堂供養は曼荼羅供、御導師は公豪(こうがう)僧正、讃衆(さむじゆ)二十人にてありし後、憲実(けんじち)御導師にて定朝堂(ぢやうちようだう)供養、御移徙の後なり。御移徙には、出だし車五両ありし、一の車の左に参る。右に京極殿。撫子の七衣(ななつぎぬ)、若菖蒲の表着(うはぎ)なり。京極殿は藤の五衣なり。御移徙三日は白衣(しろぎぬ)にて、濃き物の具・袴なり。

「御壺合せあるべし」とて、公卿・殿上人・上臈・小上臈、御壺を分け給はる。常の御所の東(ひむがし)向きの二間の御壺を給はる。とりつくる定朝堂の前二間か通りを給ひて、反橋(そりはし)を遣水に小さく美しく渡したるを、善勝寺の大納言1)、夜の間に盗み渡して、わが御壺に置かれたりしこそ、いとをかしかりしか。

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の大納言すむ所へ車こひてかへりぬまことや六条殿の
ちやうかうたうつくりたてて四月に御わたまし御堂く/s74r k2-18
やうはまんたらく御導師はこうかう僧正さむしゆ二十人にて
ありしのちけんしち御導師にてちやうちようたうくやう
御わたましの後なり御わたましにはいたし車五両
ありし一の車の左にまいる右に京極殿なてしこの
七衣わかしやうふのうはきなり京極殿は藤の五きぬなり
御わたまし三日は白きぬにてこき物のくはかまなり
御つほあはせあるへしとて公卿殿上人上らふこ上らふ
御つほをわけ給はるつねの御所のひむかしむきの二まの御
つほを給はるとりつくるちやうちようたうのまへ二まか
とをりを給てそりはしをやり水にちいさくうつくしく
わたしたるをせんせうしの大納言夜のまにぬすみわたして我御つ/s74l k2-19

http://kotenseki.nijl.ac.jp/biblio/100218515/viewer/74

ほにをかれたりしこそいとをかしかりしかかくしつつ八月の/s75r k2-20

http://kotenseki.nijl.ac.jp/biblio/100218515/viewer/75

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1)
四条隆顕
text/towazu/towazu2-08.txt · 最終更新: 2019/05/21 14:41 by Satoshi Nakagawa