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text:tosanikki:se_tosa10

土佐日記

1月1日 大湊

校訂本文

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元日、なほ同じ泊(とまり)1)なり。白散(びやくさん)を、ある者2)、夜(よ)の間とて、船屋形(ふなやかた)にさし挟めりければ、風に吹きならされて、海に入れて、え飲まずなりぬ。

芋茎(いもじ)・荒布(あらめ)も、歯固めもなし。かうやうの物無き国なり。求めしもおかず。ただ、押鮎(おしあゆ)の口をのみぞ吸ふ。この吸ふ人々の口を、押鮎もし思ふやうあらんや。

今日は都のみぞ思ひやらるる。「小家(こへ)の門(かど)の注連縄(しりくへなは)の鯔(なよし)の頭(かしら)、柊(ひひらぎ)ら、いかにぞ」とぞ言ひあへなる。

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元日なほおなしとまりなり白散を
あくものよのまとてふなやかたにさし
はさめりけれはかせにふきなら/kd-13r
されてうみにいれてえのますなりぬ
いもしあらめもはかためもなしかう
やうのものなきくになりもとめしも
おかすたたおしあゆのくちをのみそ
すふこのすふひとひとのくちをおし
あゆもしおもふやうあらんやけふは
みやこのみそおもひやらるるこへの
かとのしりくへなはのなよしの
かしらひひら木らいかにそとそいひ
あへなる/kd-13l

https://kokusho.nijl.ac.jp/biblio/100421552/13?ln=ja

1)
大湊
2)
「ある者」は底本「あくもの」。諸本により訂正
text/tosanikki/se_tosa10.txt · 最終更新: 2023/09/02 13:23 by Satoshi Nakagawa