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醒睡笑 巻6 推はちがうた
36 真言と天台と二院並びてあり・・・
校訂本文
真言と天台と二院並びてあり。真言の寺の院主は学解(がくげ)ある僧なり。天台の院主は無学なりき。真言の寺に飼ひ犬の名を天台と付けて呼ぶ。天台の院に飼ふ犬を真言と付けたり。両寺の意趣はれがたし。
ある会合の席に、天台の院主、「何とてそれの犬を『天台』とは呼ばるるや」。「いやただ別の義なし。大の字に天を打てば犬と読む間、『点大』といふまでに候ふ」と。真言の能化(のうげ)、「そなたの犬を真言とは、など付けられたる」。「されば、犬の歩(あり)きを見るに、まづ前足をはぬれば、真(しん)といひ、あとの足をはぬれば、言(ごん)といふに似たり」と。
翻刻
一 真言と天台と二院ならびてあり真言の寺 の院主は学解ある僧なり天台の院主は 無学なりき真言の寺に飼犬の名を天台と つけて呼天台の院に飼犬を真言とつけた り両寺の意趣はれかたしある会合の席 に天台の院主なにとてそれの犬を天台とは よはるるやいや唯別の義なし大の字に 天をうては犬とよむ間点大といふまてに候と/n6-59l
真言の能化そなたの犬を真言とはなとつ けられたるされは犬のありきを見るに先 前足をはぬれは真といひあとの足をはぬれは 言といふに似たりと/n6-60r
text/sesuisho/n_sesuisho6-119.txt · 最終更新: 2022/06/03 15:15 by Satoshi Nakagawa