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撰集抄

巻8第14話(89) 高光卿事(歌)

校訂本文

昔、高光の宰相1)の、官(つかさ)申しけるに、かなはで、歎きにしづみ給ひけるころ、九月十三夜に、「月前述懐」といふ題にて、内裏にて歌合の侍りしに、かく、

かくばかり経(へ)がたく見ゆる世の中にうらやましくもすめる月かな

と詠みて参らせられければ、御門、しきりに御感ありて、急ぎ宰相になさせ給ひにければ、「歌は人の詠むべかりけるものかな。心の中の思ひ入る闇をも言葉に出ださざらましかば、いつもしづみて、はるる世あらじ」とて、悦び給ひけるに、「げに」と思えて、あはれに侍り。

翻刻

昔高(為イ)光の宰相のつかさ申けるにかなはてな
けきにしつみ給ける比九月十三夜に月前述/k243l
懐と云題にて内裏にて哥合の侍しにかく
  かく計へかたくみゆる世の中に
  うらやましくもすめる月かな
とよみてまいらせられけれは御門しきりに御感
有ていそき宰相になさせ給にけれは哥は人
のよむへかりける物かな心の中の思入るやみを
もこと葉に出さざらましかはいつもしつみてはるる
世あらしとて悦給けるにけにと覚てあはれ
に侍り/k244r
1)
藤原高光
text/senjusho/m_senjusho08-14.txt · 最終更新: 2016/09/11 11:39 by Satoshi Nakagawa
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