text:mumyosho:u_mumyosho061
無名抄
第61話 俊成清輔歌判有偏頗事
校訂本文
俊成清輔歌判有偏頗事
顕昭いはく、「このごろの和歌の判は、俊成卿・清輔朝臣、左右(さう)なきことなり。しかあるを、共に偏頗ある判者なるにとりて、その様(やう)の変りたるなり。俊成卿は、『われも僻事(ひがごと)をす』と思ひ給ひつる気色(けしき)にて、いともあらがはず、『世の中の習ひなれば、さなくもいかがは』などやうに言はれき。清輔朝臣は、外相はいみじう清廉なるやうにて、偏頗といふことつゆも気色に現さず。おのづから人の傾(かたぶ)くことなどもあれば、気色を誤りて、あらがひ論ぜられしかば、人の皆そのよしを心得て、さらに言ひ出づることもなかりき」。
翻刻
俊成清輔哥判有偏頗事 顕昭云この比の和哥の判は俊成卿清輔朝臣さう なきこと也しかあるをともに偏頗ある判者なる/e50r
にとりてそのやうのかはりたるなり俊成卿はわれも
ひか事をすとおもひ給つるけしきにていともあら
かはす世中のならひなれはさなくもいかかはなとや
うにいはれき清輔朝臣は外相はいみしう清廉
なるやうにて偏頗といふことつゆもけしきに
あらはさすおのつから人のかたふくことなともあれは
けしきをあやまりてあらかひ論せられしかは
人のみなそのよしを心えてさらにいひいつることも
なかりき/e50l
text/mumyosho/u_mumyosho061.txt · 最終更新: 2014/10/05 03:42 by Satoshi Nakagawa