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蒙求和歌

第10第13話(143) 晏嬰脱粟

校訂本文

晏嬰脱粟1)

晏嬰は斉の国の人なり。驕りを厭ひ、賤しきを好みけり。つねに脱栗に食す。味を重せざるなり。

斉の景公、晏嬰を使(つかひ)として、楚国へ遣はしけり。楚王、晏嬰が智弁のほどを聞きて、「心見む」と思して、ひそかに人を縛りて、殿の前に置いて、そら知らずして、「何者ぞ」と人に問はるるに、「斉の国の者の、盗みしたるを、召しいましむるなり」と申せり。

楚王、「斉の国の人は、盗みをする習ひにてあるや」と、晏嬰に問ひ給ふに、答へていはく、「君、聞き給へ。江南の橘(たちばな)の木を、江北に移し植うれば、その木、枳茱(からたち)となれり。水土の異なるゆゑなり。人も、斉にある時には、また盗みもせねども、楚に来たりては、かく習へり。明らかに知りぬ、土位のしからしむるなるべし」と申せり。

王及び、左右の人、おほきに恥ぢて、答ふるかたなし。

脱粟は纔脱粟而已。不精鑿也。説苑云、晏子曰、合升斗之穀以満倉廩、太山之高非一石也。累卑然後高也。夫治天下者、非一二之言也。
晏子、一日に三度(みたび)斉の景公を諫めき。景公、病重くなりてのころ、晏嬰、一日に三度われを責めき。「今、誰(たれ)かわれを責めむ」とぞ、心細く聞こえける。

  粟津野の草葉が末にかかりてもつゆの命は長らへぬべし

翻刻

晏嬰脱栗(シヨク)  晏嬰ハ斉ノ国ノ人也。ヲコリヲイトヒイ/ヤシキヲ好ミケリツネニ食ス脱栗ニ不(ル)重(セ)
味ヲ也斉ノ景公晏嬰ヲツカヒトシテ楚国ヘツカハシケリ
楚王晏嬰カ智弁ノホトヲキキテ心ミムトヲホシテヒソ
カニ人ヲシハリテ殿ノ前ニヲイテソラシラスシテナニモノソ
ト人ニトハルルニ斉ノ国ノモノノヌスミシタルヲメシイマシム/d2-15l
ルナリト申セリ楚王斉ノ国ノ人ハヌスミヲスルナラヒニテアル
ヤト晏嬰ニ問ヒ給ニコタエテ云君キキタマエ江南ノタチハナノ
木ヲ江北ニウツシウフレハソノ木枳茱(カラタチ)トナレリ水土ノコト
ナルユヘナリ人モ斉ニアル時ニハ又ヌスミモセネトモ楚ニキタリテハ
カクナラエリアキラカニシリヌ土位ノシカラシムルナルヘシト
申セリ王ヲヨヒ左右ノ人ヲホキニハチテコタフルカタナシ
  脱粟ハ纔脱粟而已不精鑿也説苑云晏子曰合升斗之
  穀以満倉廩太山之高非一石也累卑然後高也夫
  治天下者非一二之言也晏子一日ニミタヒ斉ノ景公ヲ
  イサメキ景公病ヲモクナリテノコロ晏嬰一日ニミタヒワレヲ
  セメキイマタレカワレヲセメムトソ心ホソクキコヘケル
    アハツノノクサハカスヘニカカリテモツユノイノチハナカラヘヌヘシ/d2-16r
1)
「粟」は底本「栗」。読み仮名及び原拠により訂正。以下混在するがすべて同じ。
text/mogyuwaka/ndl_mogyuwaka10-13.txt · 最終更新: 2018/02/06 00:59 by Satoshi Nakagawa
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