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蒙求和歌
第4第14話(69) 阮孚蝋屐 祖約好財 埋火
校訂本文
阮孚蝋屐 祖約好財 埋火 晋代人
阮孚は足駄(あしだ)を好み、祖約は財(たから)を好みし人なり。常にこれを営むこと、あひ同じ。
人、行きて、二人が得失を計るに、まづ祖約がもとに行きて見れば、財を屏当して簾(すだれ)を後ろに当てて、身を傾(かたぶ)けて、隠しそばめて、その気色、心よからず。
次に阮孚がもとに行きて見れば、火を吹きて屐を蝋して、歎きていはく、「知らず、一生の内に、いくばく足駄をか用ゐむとする」と言へり。神色怡然として困暢なり。
この時に、阮孚は得、祖約は失と定めてけり。
屏当は、畳み伸し納むと言へり。屏は去声なり。併当とも書けり。蝋といはるは繕飾なり。
消えかへり思ふも悲し埋火(うづみび)のいけるあしたのほどもなき世を
翻刻
阮(いゑん)孚(ふ)䗶(らふ)屐(けき) 祖約(やく)好(かう)財(さい) 埋火 晋代人 阮孚はあしたをこのみ祖約はたからをこのみし人なりつねにこれを いとなむことあひ同し人ゆきて二人が得失をはかるに先つ祖 約かもとに行て見れはたからを屏当(へいたう/しをさめ)してすたれをうしろに あててみをかたふけてかくしそはめてそのけしき心よからす 次に阮孚かもとに行て見れは火をふきて䗶(そ)屐(あしたを)なけきて/d1-33r
云くしらす一生の内にいくはくあしたをかもちゐむとすると云り 神(しむ)色(しよく)怡(い)然(せむ)として困(こむ)暢(ちやう)なりこの時に阮孚は得(とく)祖約は失(しつ) とさためてけり屏当はたたみのしをさむといへり屏は去声※この一行は丁末に欠かれている。 なり併当ともかけり䗶と云るは繕餝なり きへかへりをもふもかなしうつみひのいけるあしたのほともなきよを/d1-33l
text/mogyuwaka/ndl_mogyuwaka04-14.1511188398.txt.gz · 最終更新: 2017/11/20 23:33 by Satoshi Nakagawa