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text:kohon:kohon009

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第9話 伊勢大輔、歌の事

伊勢大輔哥事

伊勢大輔、歌の事

校訂本文

翻刻

いまはむかし紫式部上東門院にうた読
いふのものにてさふらふに大斎院より春つ方
つれつれにさふらふにさりぬへきものかたりや候と
たつね申させ給けれは御さうしともとりいたさ
せ給ていつれをかまいらすへきなとえりいたさせ給
にむらさき式部みなめなれてさふらふに/b47 e23
あたらしくつくりてまいらせ給つかしと申
けれはさらはつくれかしとおほせられけれは源氏は
つくりてまいらせたりけるとそいよいよ心はせす
くれてめてたきものにてさふらふほとに伊勢
大輔まいりぬそれもうたよみのすちなれはとの
いみしうもてなされ給ならよりとしに一度やへさ
くらををりてもてまいるをむらさき式部ことしは
大輔にゆつり候はむとてゆつりけれはとりつきてまい
らするにとのをそしをそしとおほせらるる御こゑに/b48 e24
つきて
  いにしへのならの宮このやへさくら
  けふここのへににほひぬるかな
とりつきつるほとほともなかりつるにいつのまにおもひ
つつけけむと人もおもふとのもおほしめしたりめて
たくてさふらふほとにちしの中納言のこのゑちせむ
のかみとていみしうやさしかりける人のめに成に
けりあひはしめたりけるころ石山にこもりてをと
せさりけれはつかはしける
  みるめこそあふみのうみにかたからめ/b49 e24
  ふきたにかよへしかのうらかせ
とよみてやりたりけるよりいととうたおほえまさ
りにけりまことに子孫さかへて六条の大弐ほりか
はの大弐なと申ける人々この伊勢大輔のまこな
りけり白河院はひいこおはしましけり一の宮と申
けるをりまいりてみまいらせけるにかかみをみ
よとてたひたりけるにたまはりて
  君みれはちりもくもらてよろつ代の
  よはひをのみもますかかみかな
御返大夫殿宮の御をちにおはします/b50 e25
くもりなきかかみのひかりますますも
てらさむかけにかくれさらめや/b51 e25
text/kohon/kohon009.1399625483.txt.gz · 最終更新: 2014/05/09 17:51 by Satoshi Nakagawa