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今昔物語集

巻9第45話 震旦厚谷謀父止不孝語 第卌六

今昔、震旦の□□代に、厚谷1)と云ふ人有けり。楚の人也。

其の父、不孝にして、父の遅く死ぬる事を常に厭ふ。而る間、厚谷が父、一の輿(こし)を造て、老たる父を乗せて、此の2)厚谷と共に此れを荷て、深き山の中に将て行て、父を棄置て、家に返ぬ。

其の時に、厚谷、此の祖父を乗せたりつる輿を、家に持返たり。父、此れを見て、厚谷に云く、「汝、何の故に、其の輿をば持返るぞ」と。厚谷、答て云く、「『人の子は、老たる父をば輿に乗せて、山に棄つる者也けり』と知ぬ。然れば、我が父をも、老なむ時に、此の輿に乗せて、山に棄てむ。亦、更らに輿を造らむよりは」と。

父、此れを聞て、「然らば、我れも老なむ時、必ず棄てられなむず」と思て、怖れ迷て、即ち山に行て、父を迎て、将返にけり。其の後は、厚谷が父、老父に孝養する事愚かならず。

此れ、偏に厚谷が謀に依て也。然れば、世挙て、厚谷を誉め、感ずる事限無し。「祖父の命を助け、父に孝養を至らしむる、此れを賢き人と云ふべし」となむ、語り伝へたるとや。

1)
底本頭注「厚ハ原ノ誤カ下同ジ」
2)
底本頭注「此ハ子ノ誤カ」
text/k_konjaku/k_konjaku9-45.txt · 最終更新: 2017/03/07 16:31 by Satoshi Nakagawa
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